理念情報

 「哲学的コラム」
Japanese Dream Realization



「先天的価値を尊重する科学哲学について」



  オックスフォードに関係の深いジョン・ロックとケンブリッジ プラトニストの女性ダマリスの往復書簡集は、プラトニックラブの典型であると同時に、プラトン的観念論とイギリス経験論哲学を橋渡しするものとして面白いし、文学的価値が高いものであると思う。果して、プラトンの「想起説」に観られるような「先天的な叡智」というものは、人間の心の内に内在されているものなのであろうかという問いは、根源的である。

 永遠普遍の自然法が、人間の理性によって発見されるということは、近代哲学におけるほとんど一致した見解であるが、人間の内奥に、理念的実在(理法、法則)が認められるかどうかという点に関しては、ロックは近代の時点において認めておられない。この理念的実在(理念、理法)とは、東洋でいえば、内在せる神性、仏性、法身という思想と同じである。カント哲学でいえば、「実践理性」とは良心そのものであり、神性そのものであり、仏性そのものであり、法身そのもののことである。

 故に、「実践理性」は、永遠普遍なる道徳法則の源たりうるのである。カントは、この人間の心に内在する良心としての神性、仏性、理性の思想を、ルソーの「エミール」等から学ばれ、それが、近代以降、ゲーテ、シラー、エマソン等のヒューマニズムの潮流へとつながってゆく。カント的にいえば、人間の人格の尊厳を裏打ちするものこそ、人間に内在する神性、仏性、法身という理念的実在であるのである。

 そして、この根源的テーマは、倫理道徳の問題だけではなく、科学的原理と哲学的原理を考察してゆく上でも大切なテーマである。科学的合理主義の精神は、果して人間の内奥に先天的に実在する魂、良心、神性、仏性、理念等、永遠普遍の価値の源を真に発見しうるのであろうか。人間をその対象とした時期に、人間を手段として考えることなく、目的として考えることが出来るものなのだろうか。

 かつて、哲学に科学的精神が必要であったように、新時代においては、科学の中に哲学的精神が必要となっており、さらに、寛容で健全な宗教的精神が必要となっており、この三者が真に止揚され、統合されてゆくことが、新時代の哲学潮流、学問潮流の源となってゆくことであろう。

 あらゆる面において、すべては善くなってゆくしかないのである。



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